読了。

 「サーラの冒険」10年ぶりの(!)第5巻。あとがきによると、最終巻となる予定の次巻第6巻は、1年以内に出るそうです。ほんとだなー。絶対だなー。カウントダウンしてやるー。と大人気なくなるくらいこの10年は永かったのですが、待った甲斐はあった。これまでのあらゆる伏線が結実するこの第5巻は、文句なしにおもしろい。

 本編はおろか「ナイトブレイカーズ」とかリプレイ第2部とか現在入手不可能な作品とまでリンクしているのですが、まあそこらへんは知らなくても問題はないでしょう。あいかわらずやたらとリーダビリティが高く、衝撃のラストまで一気に読めます。ああ、おもしろかった。

 第1巻のサーラは、その身の丈に比べてあまりに大きすぎる夢を抱えた孤独な少年でした。その夢とは、「ヒーローになりたい」こと。他愛ない、しかし真剣なその想いは、ある冒険者たちと出逢うことで現実のものとなっていきます。

 かれらに才能を見出されたサーラは、家出して冒険者になり、何度も失敗を繰り返しながらすこしずつ成長し、ときには大人をも驚かせるほどの才能の閃きをみせるようになるのです。そして今回、かれはある事情から生まれ育った村へ帰ることになるのですが――。

 小説の構成は、コンセプト(テーマではなく)によってある程度限定されるものです。だから読み慣れると、大枠でどのような方向に進むのかは大抵見えるようになってくる。

 前巻でサーラは幸福の絶頂にありました。従って、そろそろ苦悩と試練に直面しなければならない時期に来ている。そうでないとドラマは盛り上がらない。それはわかっていたのですが、しかし、なるほど、こう来ましたか。思い切ったなあ。

 かつて少年を勇者にした恋が、いま、少年を大人に変える。悲劇を乗り越えて物語はクライマックスへ向かいます。作者の約束が破られないことをお星様に祈りましょう。