てるてるあした

てるてるあした

 読了。

 加納朋子の最新作は秀作「ささらさや」の続編。

 前作は愛する夫を亡くし未亡人になってしまった女性サヤと、幽霊になって彼女を見守る夫をえがいた連作短編でしたが、今回の主人公は多重債務を抱える親にすてられた少女、照代。

 親戚の老女(前作にも登場した久代)を頼って佐佐良にやってきた彼女は、次々とふしぎなことが起こるこの街で、ゆっくりと傷を癒しながら、労働すること、人を責めるのではなく、自分をたかめることを学んでいく――。

 佐佐良にやってきた直後の照代は、突然わが身に降りかかった惨劇に、不平、不満、怒り、混乱、絶望を感じまくり、非常にいやみな少女になっているのですが、苦労しながらすこしずつ成長していきます。

 はじめは自分を哀れむだけだった照代が、すこしずつ共感の輪を広げていく展開は、まあ感動的。だけどあまりにも正しすぎ、まっすぐすぎるので、わが身をふりかえって惨めになる。とてもこうは生きられない。

 たしかに感謝することは大切だし、自分だけが不幸なわけではないし、前を向いて生きていくべきだし、自分を哀れんでいてもしかたない。

 それはそうなんだけれど、でも、できないよなあ……。

 なんだかんだいって照代はいい子なので、最後には自分を裏切ったひとすら赦してしまうのですが、現実には、なかなかこうはいかないと思う。

 それとも僕個人がだめ人間なだけだろうか。まあ、そうかもしれないけど、あまりに明るく前向きな人間を見るとこそこそ日陰に隠れなければならないような気分になるね(だめすぎ)。

 小野不由美の「風の万里、黎明の空」とか「図南の翼」あたりと同じようなテーマなので、あの作品が好きなひとにはおすすめかと。

 あたらしい作品になるほど推理色が褪せていく感のある加納作品ですが、今回は遂にミステリ性がすっかり薄らぎきってしまったようえす。

 いつもながらの「日常の謎」は要所要所にちりばめられてはいるものの、さすがにこれをミステリとよぶのは無理がある。

 ストレートなビルドゥングス・ロマンであり、ファンタジー

 トリッキーな構成がひかる「魔法飛行」を偏愛する身としては哀しくないこともないけれど、これはもう仕方ないよね。推理作家の宿命ですから。

 そのかわりなめらかな叙述はめちゃくちゃ秀逸で、読みはじめたら止まらない。もともと上手かったけれど、さらに腕を上げたなあ。偉いやっちゃ。

 それにしても、この表紙は素晴らしいですね。

 表紙の役目のひとつに購入意欲を煽ることがあると思うけど、その点これは最高です。この絵を見ただけできっと中身も凄くさわやかな物語に違いないと思えるもん。