きれいなものを着て おいしいものを食べて 男の人からちやほやされて 何の不自由や心配もなく 生きたい ――――そういうことじゃない 私が本当に欲しいものは 何?

 再読。

 というか、しょっちゅう読み返しているのですが、いままで感想書いていないのでここで書いておこう。槇村さとるの恋愛仕事成長まんが、コンパクトにまとまった全4巻。このひとの漫画はいつもそうなのですが、これも一種のビルドゥングス・ロマンで、ひとりの女性が自立し、確固たる自分を手にいれるまでのするまでのものがたりです。

 一流企業のOLだったのに、突然リストラに遭ってしまい、つきあっていた男の正体はばかで、否応なく自分さがしする羽目になってしまった女性の彷徨がキュートに綴られています。

 主人公が父をなくしたばかりのお嬢様で、さいごには一流のコックになってしまう「おいしい関係」あたりと比べると、だいぶふつうの女性に近いポジションといえるでしょう。

 作者のインタビューによると、なさけなくて世界が狭い主人公は動かしづらかったそうですが、読んでいるほうとしては大変リラックスできる作品だと思います。

 世界を股にかけた大ロマンもいいけれど、いつもいつも波乱万丈じゃつらいよね。おかげで派手な要素は薄いのですが、登場人物の服装がさりげなくおしゃれなのはさすが。このひとの漫画は画面に花があるんだよな。

 ぼくは槇村さとるの漫画は基本的に好きなんだけれど、テーマ性が強すぎる場合は、いくぶん教条的に感じてしまうことがある。

 押し付けがましく感じるというか、なんかこう、主人公が最後にたどり着くべき「良い人間」の鋳型がきまっていて、すべてがそこへむけて進んでいるように感じられてしまうと、どうも納得できない感じがするんだよね。

 この作品の場合はそこらへんの舵取りが微妙で、ぼく的にはぎりぎりセーフな感じ。完全無欠が人間はひとりもでてこなくて、だれもが悩みと苦しみをかかえながらそれでも一生懸命生きている雰囲気が心地いい。

 この作品の主人公は、ほかの作品の中心人物と比べればごく平凡なキャラクターなのですが、逆にいえばリアルな手触りがあって、これはこれで魅力的。

 いや、じっさい、彼女の悩みは他人事じゃないんだよな。「自立」ってなんなのか、ぼくにはわからない。

 ひとりで生きていくっていっても、無人島でロビンソン・クルーソーな生活しているわけじゃなし、本当にひとりで生きられるわけがない。自立した人生って、どういうものなんだろうね。だれか僕に教えてくだされ。ん、これこそ依存的な態度か?