よつばと!(3) (電撃コミックス)

よつばと!(3) (電撃コミックス)

 読了。

 もう素晴らしいとしかいいようがありません。6歳のよつばと彼女の周囲の人びとのあたたかな暮らしを快活にえがくあずまきよひこ初の長編漫画。前作「あずまんが大王」も傑作だったけれど、「よつばと!」まで来るとほとんど至芸の域に達している。

 人類社会最強のコマ割り萌え漫画に認定してあげよう。いや、じっさい、どうしてこの人はこんなに漫画が上手いんでしょう。これから漫画家をめざす人はこの本を300回くらい読みかえすと良いと思います。ときに微妙にずらされて反復される絶妙の「間」を身につけることができるかもしれません。いや、できないか。

 どこまでも無垢で無邪気で元気で元気で元気なよつばの日常は、かぎりない冒険にみちています。大人にはなんでもないことでも、彼女にとっては生まれてはじめて経験するふしぎな体験なのです。

 退屈などどこにもない。倦怠など影すら見あたらない。なんという美しい世界でしょう。しかし、おそらくは僕たちもかつてはここにいたはずなのです。だから、このあかるく楽しい物語は同時にかぎりなく哀切なものである。

 かつて、世界はこんなにも美しかった。ふしぎと冒険にみちみちていた。それなのに、時が過ぎるとともに光は翳っていく。だからこそ、彼女の周囲の大人たちはよつばの無邪気さを大切に思い、守ろうとするのです。

 よつばの冒険の日常は、まさに冒険であるがゆえに、無数の小さな危機にさらされている。ひらかない扉を前によつばが立ちすくむ場面の、無限の寂寞。この作品の大人たちはそうした危機からよつばを守っている。

 「よつばと!」というタイトルからもわかるとおり、この物語はよつばの物語であると同時によつばと暮らす人びとの物語でもあるのです。恵那はまだよつばと同じ子どもの世界に属しているかもしれない。しかし、ジャンボやあさぎはもう別の世界にいる。

 けれど、かれらがいるからこそ、よつばの存在がよりいっそうかけがえないものとして感じられるのかもしれません。やっぱり本当にゆたかな世界は美少年美少女だけではなかなか成り立たないんだよね。