龍臥亭幻想 上 (カッパノベルス)

龍臥亭幻想 上 (カッパノベルス)

龍臥亭幻想 下 (カッパノベルス)

龍臥亭幻想 下 (カッパノベルス)

 読了。

 御手洗潔は日本を代表する天才型(変人型)名探偵のひとりだが、10年ほど前、なにを思ったのか突然北欧はスウェーデンに渡来してしまい、いまではその地で大学教授をしている。

 したがって「水晶のピラミッド」事件を最後に、御手洗と石岡は再会していない。そこで日本に残される羽目になった御手洗の伝記作家、石岡和己の冒険をえがいたのが「龍臥亭事件」、石岡絶不調の時期の物語である。

 本書は「龍臥亭事件」の続編。雪に閉ざされた龍臥亭を舞台に、ふたたびまきおこる殺人事件と不可能犯罪に、石岡が単身立ち向かう。

 解決編では御手洗潔(声だけの出演)と吉敷竹史(トリック解説だけの出演)が登場し、これまで書き継がれてきた御手洗ものと吉敷ものが合流する。アメリカにいる松崎レオナを除けばほぼオールスター・キャストといっていいだろう。

 この本を読んだだけでは吉敷刑事とかれの妻、通子を巡る事情がいまひとつ不鮮明なのだが、これは「涙、流れるままに」を読めということなんだろうなあ。

 20年以上にわたって書き継がれた物語世界は、すでに「ミタライ・サーガ」ともいうべき壮大な世界を形成しているが、その弊害として一見さんお断りの世界になってしまっていることも否めない。

 まあ、そういう人はまず「占星術殺人事件」、「斜め屋敷の犯罪」、「北の夕鶴2/3の殺人」、「奇想、天を動かす」などの初期名作を読んでから先へ進めばいいんだけど。

 今回も謎の怪奇はいつもどおり。地震でわれたコンクリートの下から行方不明の死骸が顔をだし、組み立てられた亡骸から伝説の魔王がよみがえる。そして解決編に多少むりが感じ取れるのもいつもどおり。

 トリックよりもむしろ名探偵不在のまま推移する事件を必死に解決へ導こうとする石岡の復活劇が見どころだろう。しかし今回最大の謎は里美と御手洗がなにを話していたのかということかもしれない。