医龍―Team Medical Dragon (7)

医龍―Team Medical Dragon (7)

 読了。

 文句なしにおもしろい。「ブラック・ジャックによろしく」や「Dr.コトー診療所」などの人気作が咲き誇り、いまや百花繚乱の態がある医学漫画のなかでも白眉というべき一作。

 物語は、病院改革の志をその胸に秘める女性助教授加藤が、そのための切り札として医学界を追われた天才外科医朝田を招聘することからはじまる。手術の腕はまさに神業、しかしその性格は倣岸不遜をきわめる朝田は、加藤の思惑通りに活躍するものの一方でさまざまな問題をひきおこす――。

 と、こう書けば超人的なスーパーヒーローが大活躍する荒唐無稽な物語を想像されるかもしれない。それは一面では正しいが、べつの一面ではちがう。

 朝田はたしかに比類ない天才外科医である。高い志をもち患者のことを第一に考える正義漢である。しかし、その朝田ですらひとりで手術をすることはできない。朝田の天才は、さまざまな面でかれをサポートする信頼にたるスタッフがいて、はじめて花ひらくのである。

 Team Medical Dragon――この作品の真骨頂はチームによる医療をえがくところにある。しかし、その反面、朝田はチームワークを乱す大問題児でもある。つねに仲間のことより患者のことを優先して考える彼は、病院内に幾多の敵をつくっていく。

 むろん朝田は正しい。医師である以上、患者を最優先して考えることは当然だ。しかし、かれの正しさのなんと冷徹で残酷なことだろう。あるいは失敗を犯し、あるいは不正を働き、そしてそれを隠そうとする医師たちも、かならずしもみな極悪人ではないのだ。

 医者になるまでの努力と我慢の日々、周囲の期待、年老いた両親、そういった決して脱落することが赦されない状況が、かれらの良心を縛りつける。かれらが不正に走る心理は、けっして理解できない怪物のそれではない。理解も、納得も、共感も、同情すらもできるごくありふれた心理にすぎない。

 しかし朝田はそれらの事情を一顧だにしない。かれが第一に考えるのは患者の事情のみ。かれは一点の曇りもない正義の剣で同僚の医師たちを裁き、破滅させていく。かれらの夢を、努力を、苦悩と忍耐の日々を、朝田はあまりにあっさりと切り裂いてしまう。

 かれはたしかに正しい。しかし、凡人がその苛烈さについていくことは容易でなく、みずから彼を病院に招いた加藤も、やがて朝田をもてあますようになる。

 そして朝田の周囲で渦巻く権謀術数。この巻は、その渦がいよいよ激しく渦巻くひとつのターニング・ポイントになっている。ジャズにたとえられる朝田の超絶技巧はむろん、不屈の執念で教授をめざす加藤の動向からも目を離すことはできない。