魔法飛行 (創元推理文庫)

魔法飛行 (創元推理文庫)

 読了。

 デビュー作「ななつのこ」の続編、最新作「スペース」の前編にあたる作品。リリカルでセンチメンタルな物語のなかに巧妙な罠を仕掛けた前作同様、複数の短編をひとつの謎で首飾りのようにつなぎ合わせた構成の妙がひかり、前作を上回る傑作となっている。

 いや、これは本当に傑作。鮎川賞を受賞した前作も充分に素晴らしい出来だったが、一本の小説としての完成度では本作が上だろう。ほとんど奇術的な、綱渡りめいた小説技巧に支えられて、日常の謎を巡る物語はいっそうあざやかな花を咲かせている。

 主人公の駒子が書き送った手紙と探偵役の人物の返信をならべた構成は前作を踏襲している。駒子が日常生活のなかで出逢ったふしぎな「謎」を含んだ物語を、小説の形にしてかれのものとへ送ると、かれはあっさりとそれを解き明かしてしまうという次第。

 しかし、本作では名探偵による解決編のあとにさらになぞめいた文章が挿入され、いっそう神秘性を煽る。「現実から虚構への手紙」を名乗るその手紙は、だれからだれへ送られたとも知れず、いったい物語にとってどんな意味をもつのかもわからない。だがさいごにはすべての謎がひとつの結末へと収束し、さわやかな感動を呼ぶ。

 主に駒子の学園生活が描かれているため、前作以上に北村薫の「私」シリーズに近い印象になっているが、全編にひろがる伏線を束ねる手際では、北村以上の才腕を示しているといっても過言ではない。

 ひとつひとつの短編がみごとに完結していながら、全体を通してみれば全く違う意味をもってくる魔術は、何度見ても見飽きることはない。

 「論理(ロジック)」と「魔法(マジック)」の合間に彼女独自の世界を見る有栖川有栖の解説も(既にかれの著書のなかで読んではいたものの)秀逸。さすが火村助教授の生みの親、平気で気障なことを書く。我孫子武丸ではこうはいかないに違いない。