天竺熱風録

天竺熱風録

 読了。

 田中芳樹の中国歴史小説最新作。今回はちょっと経路が違っていて、舞台はなんと千数百年前のインド。といっても主人公は中国人で、ヒマラヤを越えてインドに旅したあげく、その地で簒奪者とたたかうことになってしまう文官王玄策の物語です。

 中国の文官がチベットとネパールの兵を率いてインドの戦象部隊を打ち破る! ほとんどご都合主義としか思えないドラマティックな展開ですが、この王玄策は実在の人物らしい。

 しかしいつものことながら、主役の物語よりも、それに関連して綴られるさまざまな歴史上の挿話のほうがおもしろい。

 インドの大王ハルシャ・ヴァルダナとか、チベットの名君ソンツェン・ガンポとか、歴史の教科書には載っていたけれど具体的にどのような業績をあげたのかわからない人びとも登場します。

 また、アレクサンドロス大王の征服に乗じてインドを支配しようと試みた一代の梟雄、護民王チャンドラグプタ・マウリヤとか、チベットの王に降嫁してその国の国民に愛され、「女菩薩」とよばれた太宗李世民の皇女だとか、脇役の物語がとてもおもしろい。

 まあ、とにかく日本の歴史小説史上類をみない小説ではあります。この時代のインドを描こうなんて、史料を集めるの大変だったろうなあ。