キャリア こぎつね きんのもり 1 (クイーンズコミックス)

キャリア こぎつね きんのもり 1 (クイーンズコミックス)

 読了。

 「ロッカーのハナコさん」の作者さまですが、これも素晴らしいです。仕事ひとすじに生きる予定のキャリアウーマンの早歩(さほ)のもとに、祖母の遺言とともにひとりの幼い少女がとどけられる。

 「童子(わらし)」という名の少女を人形だと思い込んだ早歩は3ヶ月間彼女を預かることになるが、童子はつねにきつねの仮面を被り、しかもひと言もことばを話そうとしないのだった――という設定がじつに秀抜。

 いつも仮面を被ったままで、一度も素顔をみせない童子ちゃんが次第にかわいくみえてくるのはまさに漫画のマジック。作者の腕の見せ所でしょう。

 いくぶん展開が拙速に過ぎる印象はありますが、そうかといってゆったりと進めば冗長だといいだすのだからわがままなものです。

 じつはこの手の「突然子育てもの」は少女漫画やレディースコミックではそれなりにポピュラーなテーマでして、このあいだ取り上げた「愛してるぜベイベ」もそうだし、タイトルは忘れたけれど入江紀子さんも一作書いていました(いささか中途半端な終わりかたでしたが)。

 こういった作品は一見するとありきたりの母性礼賛にみえることもありますが、しかしその真価は、生さぬ中に静かに芽生えていく愛情と信頼を通して、「家族」や「親子」といった概念をもういちど検証していくところにあるのだと思います。

 「ふつうの」家族があたりまえに甘受しているものをもう一度はじめから考えなおす試み。いずれにしろ、この広い世の中、血よりも濃い水だっていくらもあるもの。

 いつか早歩のまえで童子がみずからその仮面をとり、笑顔を見せてくれる日がくることを祈りたいものです。笑うことこそは、けっして人形にはできないことなのですから。