カルプス・アルピス

カルプス・アルピス

 読了。

 6枚の絵からインスピレーションを得て書かれた6編の掌編を束ねた連作短編集。なかみはあいかわらずの予定調和的な恋愛小説だが、今回はいつもよりさらに荒唐無稽な展開が御伽噺めいていて楽しい。

 作者自身、さきの展開をまったく考えないで書いたそうだ。僕はいままで読んだ嶽本野ばらのなかでこの本がいちばん好きかもしれない。

 嶽本野ばらの小説は選ばれた少数者のための楽園だ。そこではいまは見失われた古風な道徳と価値観がいまも力を持っている。

 嶽本は勇気をもって現代の常識と良識に背中をむけ、じぶんの美学にだけ忠実に世界をつむいでいる。だからこそ、かれの世界はこのうえなく独創的で、しかも端正で静謐で、ほほえましさと叙情がぼくらの胸を射るのだ。

 小説を書こうなんて人間は他人の意見にかるがるしく動かされたりしちゃダメだってこと。ああ、それにしても読んだ本を紹介しきる余裕がない。