学校を出よう!〈4〉Final Destination (電撃文庫)

学校を出よう!〈4〉Final Destination (電撃文庫)

 読了。

 ハルヒのひとがメディアワークスから出しているシリーズです。ちょうど今月号の「SFマガジン」でタニグチリウイチ氏がこの巻を取り上げているのですが、あれはさすがにちょっと誉めすぎじゃないかという気がしないでもない。

 基本的には「涼宮ハルヒ」シリーズとおなじくかなりいいかげんな萌えSF小説。この最新刊は平行世界テーマで、これはなかなかおもしろかった。

 榎木津礼二郎の偽物みたいな性格の男とゴスロリ黒服美少女が世界を消滅させる危険性をもつという謎の少女を捜し求める話なのですが、その少女の肉体のなかでは実は平行世界の自分との人格の入れ替わりが起こっているんですね。

 何百もの平行世界を人格だけが玉突き的に移動してゆくというこのイメージはちょっとおもしろい。

 彼女の主観ではすこしだけ周囲のなにかが変わっているという違和感だけが感じられ、またその世界の彼女の肉体だけを見ている周囲のものには次々と人格が微妙に変化しつづけているようにみえるのです。

 グレッグ・イーガンあたりが極限まで追求していけばとてつもないセンス・オブ・ワンダーに到達できそうなアイディアではありますが、残念ながらこの作品では剥き出しの発想のままで終わっている感は否めません。

 そもそもそれぞれ微妙に異なる平行世界を移動しつづけているのに、彼女の名前だけは不変なのはどういうことなのだろうか?

 まあそういうわけでSFとしては少々弱いものの、キャラクターはそれなりに揃っているし、ときどき日本語としてそれってどうよ?的な表現を見かけることがあるとはいえ基本的には非常にリーダビリティが高い小説なので、軽快な作品をお求めの向きにはお奨めできます。

 きのうの谷崎潤一郎とくらべるのは問題外としても、昨今のライトノベル業界ではかなり書ける部類に属するひとなんじゃないでしょうか。これだけ筆力があるんだから、もっと真面目に設定を考証してまともな小説を書けばいいのに。