フリークス (光文社文庫)

フリークス (光文社文庫)

 読了。

 精神病院の一室を舞台とした三篇の小説が収められた短編集。分類上は推理小説に属すが、中味をみればむしろ綾辻好みの猟奇趣味のほうが色濃く発露している。

 そもそもこの「殺人方程式」の作家は、一方ではあの妖しい「人形館の殺人」や残虐無比な「殺人鬼」の作家でもあるわけで、決してあたりまえの作法におとなしく収まっている器ではない。

 たぶん綾辻行人の血管には、あらゆる謎を一刀両断に解き明かさずにはすませられない「理知の血」とともに、ともすれば謎と怪奇と不条理そのものに深く惑溺してやまぬ「猟奇の血」もまた流れているのだろう。

 その意味で綾辻江戸川乱歩ら「タナトスのエロス」に溺れた作家たちの正嫡である。

 いかにもかれらしい凶悪なサプライズ・トリックはこの本でもいつもどおりではあるものの、今回、推理と真相解明のすえに待つものは安心ではなく、さらなる不安と眩暈である。そういう意味では、綾辻のもっともらしい小説ともいえると思う。