- 作者: 栗本薫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2004/04/09
- メディア: 文庫
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読了。
なんだかとんでもないことになっているなあ。ある意味、「グイン・サーガ」第一部完結、といっても良い内容。
この長大な物語は、ノスフェラスと呼ばれる砂漠地帯にひとりの豹の頭をもつ戦士が出現するところから始まっている。
超戦士の資質を秘めた巨躯と明晰な頭脳をもつかれは、「グイン」と「アウラ」というふたつの言葉のほか、すべての記憶を失っていた。
数奇な運命からのちに「殺人王」と呼ばれることになる若者イシュトヴァーン、滅びた王国パロの王族レムスとリンダと出会ったかれは、辺境のはてまでも経巡る遍歴とさまざまな冒険の末、やがて北方のケイロニア帝国に辿り着き、一介の傭兵から王へと成り上がって、「ケイロニアの豹頭王」とまで呼ばれることになる。
そして前巻、ふたたびノスフェラスに帰還した豹頭王は、ノスフェラスの中心──かつてこの地にあったカナン大帝国を滅亡に追いやったという「星船」のなかに乗り込み、失われた記憶の彼方、すべての謎の答えを探ろうとする。
そしてこの最新巻において、これまでの94巻にわたってグインが抱えてきた「自分は何者なのか?」という懊悩、そして「ランドック」「アウラ」「グイン」という言葉の秘密に、遂に、まさに遂に、ひとつの決着がつく。
これまで延々と読んできた読者としては待望の展開ではあるが、その果てにあるものはある意外な顛末だ。
否、さらなる未来をえがいた外伝第1巻「七人の魔導師」の内容を考えればこれは必然的な展開といっても良いのだが、時の果てから傍観する読者としてはまるですべてが永劫回帰の環を通って振り出しに戻ってしまったような感慨が残る結末である。
「それは──《異形》であった。」この言葉から始まった長い長い物語は、いま世界のありとあらゆる層を駆け抜けた末にまたもここに戻った。
「七人の魔導師」の内容を信じるならば、グインはいずれケイロニアへと帰り、ふたたびケイロニア王として君臨し、大魔導師ヤンダル・ゾックと死闘を繰り広げるはずだ。
しかし、もし作者が望むのなら、ここでサーガを終わることもできるだろう。そういう巻である。早く続きを読みたい。