- 作者: 萩尾望都
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2004/03/26
- メディア: コミック
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読了。
夢とうつつのはざまを探る「バルバラ異界」第2巻。萩尾望都の迷宮宇宙はいよいよ絢爛と錯綜をつづける。
そもそも「SFマガジン」に連載された名作「銀の三角」の時代から、萩尾が綴るSFは「サイエンス・フィクション」という言葉がもつハードなイメージからあまりに遠い夢まぼろしのような物語だった。
あるいは彼女にとってSFとは現実と虚構の境界線を越えて彼岸へとたどりつくための装置にすぎないのかもしれない。この「バルバラ異界」もそういった萩尾夢幻SFの系譜に連なる一作だ。
母親の心臓を食べて眠りに就いた少女、彼女の夢のなかの世界「バルバラ」、そのバルバラへ単身侵入してゆくドリームダイバーの男、火星人との戦争、若返りの薬、降りしきる血の雨、生まれてからのことすべてを記憶している少年──華麗なるイメージの饗宴が、新世界バルバラの扉をひらく。
萩尾望都の作品がすべてそうであるように、これも優艶なる悪夢の物語だ。まがまがしいまでに美しいために、めざめたあとも現実の光景をかすませてしまう暗い夢。
否、そもそもこのような魔性の夢にただようとき、だれがあえてめざめたいなどと望むことだろうか?