幽霊には微笑を、生者には花束を (ファミ通文庫)

幽霊には微笑を、生者には花束を (ファミ通文庫)

 読了。

 なぜか僕の巡回先各所で取り上げられているので(まあ、みんな「まいじゃー推進委員会」の推薦文を読んで買おうと思ったんだろうけど)読んでみたのだが、なるほど、悪くない。

 裏表紙には「えんため出身作家が贈る少年と幽霊のハートせつない青春ラブ・ミステリー!」などというこいつほんとうにこの本を売る気あるのかと疑問には思わずにはいられないコピーが付いているが、そんなものに騙されてはいけない。むしろゆうろさんの華麗な表紙に騙されるべき。

 僕はわが心のADV「Sense Off」をプレイしてからこの方のファンなんだけれど、今回も良い仕事をしておられます。グッジョプ!

 独特の味がある絵なんだよね。中味のほうもなかなか爽やかなハートウォーミングストーリーに仕上がっている。

 科学を信奉しオカルトをバカにする少年がよりによって幽霊の少女と出会ってしまい、幽霊になる以前の記憶をすべて喪っている彼女がただひとつ憶えている「自分は殺された」という情報をもとに少女を殺した犯人を探し出そうとするというお話なんだけれど、ミステリ色は薄く、本格の基準で評価するのはちょっと厳しい。

 本格ミステリとして評価するならやはりこれはアンフェアだと言わざるをえないだろう。真相の開示までに読者に対して「ゲームのルール」に関する情報が開示されきっていないのはまずい。

 この手の超自然要素をもちこむミステリは(たとえば西澤保彦がやったように)謎を成立させる世界観をあらかじめ整然と開示しておく必要があるわけで、その点でこの作品はいくぶん失敗している。

 伏線も弱い。僕は本格特有のフェア/アンフェア評価軸はそれほど重視しないけれど、その軸で評価するのなら失敗していると断じざるをえない。

 ただ少女が憶えているわずかな記憶から探していく彼女が殺された場所を推理していく過程などなかなかおもしろかったのは事実なので、ミステリファンの方は「ミステリじゃないもの」として読めばそれなりに楽しめるかと。

 個人的には幽霊がどのようにして周囲を知覚しているのかについてあくまで合理的に考えようとする主人公の態度などとても好感が持てた。

 難点としてはヒロインの女の子があまりにも普通にいい子なので印象に残らないところだろうか。

 たとえば少女小説としては近年屈指のヒット作となった「マリア様がみてる」のキャラクターなどは、ほぼ全員がなんらかの意味で二面性を持っている(例 一見すると病弱で清楚な深窓の美少女、その実は暴走しだしたらだれにも止められないひとりジェットコースター少女の由乃さん)。

 それに対して、この小説のヒロインは最初から最後までひたすらいい子なのでキャラクターが立体的に浮かび上がってこないのですね。

 ま、致命的というほどでもないんだけれど、キャラクター重視のライトノベルとしてはちょっと難しいところかも。ゆうろさんのイラストレーションでかなりのところまで欠点を補えている気がしますが。

 それにしても僕、ファミ通文庫なんて買ったの生まれてはじめてかもな……。