読了。

 以下ちょっとだけネタバレあり。

 ネットの一部で好評を博した熱血美少女フィギュアスケート小説「銀盤カレイドスコープ」よもやの第3弾である。

 前作が非常に綺麗に終わっているだけに、読む前にはただ続編はむりやり話を続けただけの代物になっているのではないかという懸念があり、ちょっと心配だった(ちなみにブギーポップ・シリーズの第2弾「VSイマジネーター」を読んだときも同じような予想があったが、この場合は見事に外れた)。

 それでは実際読んでみた結果はというと……まあまあというところか。比較する必要はないかもしれないが、前作には及ばないと思う。前作比85パーセントくらいの面白さ。

 はてなダイアリーのキーワードで辿った感想は好意的なものが多いので、僕の感じ方がおかしいのかもしれないが、やはりあのラストのあとでさらに物語を続けようとしたことの無理は随所にあらわれていたのではないだろうか。

 前巻のラストで世界のトップクラスまで登りつめた超絶美形主人公タズサは、今回怪我をした親友のパートナーであるオスカーという若者と期限付きのペアを組んでペアスケートの世界へと殴りこみをかける。

 まずこの設定そのものがそうとう無茶なのだが、そこは小説のことなので野暮はいわない。しかし最終的にタズサがさまざまな障害を乗り越えていくあたりの描写はやはり多少のご都合主義を感じる。

 意地悪く書くと、「天才少女がちょっとペアにも手を出したらやっぱり大成功しちゃいました。天才は天才だね」という話に見えてしまうのである。

 失敗を積み重ねたうえで成功を描くことによってカタルシスを生むドラマツルギーはスポーツものの基本だが、読者に「どうせ最後には成功するんだろ」と思われてしまうと効果は半減する。

 この巻はまだ良いとして、次の巻の展開が気になるところだ。常套手段としては怪我をしたり精神的にショックな事件が起きて滑れなくなったりするのだが……それももうやっちゃったしな。

 今回はタズサの保護者的存在だった幽霊のピートが消滅したあとの話なのでタズサの自立編ともいえるわけだが、ピートが消えたあとタズサは世界選手権準優勝までのぼりつめているので、このテーマもあまり魅力がない。

 うーん、続編のことを考えると前巻のエピローグは余計だったんじゃないかなあ。

 また、あいかわらず主役のキャラクターの強烈さに比して脇が弱く、それが葛藤の薄さを生んでいるようでもある。

 ただし前回その比類ない演技でタズサを圧倒した無表情系天才少女リアは今回も登場し、なかなか魅力的なところを見せてくれる(ていうか今回はやっぱりリアのあの科白がハイライトでしょう。だれかリア×タズサで同人誌つくりませんか)。

 またタズサの驕慢でわがままで自己中心的な性格はあいかわらずで、随所に笑えるところがある。

 スケート連盟のフィギュア強化部長、美白雪絵。

 通称『イヤミ三代』と呼ばれ、年齢は50代半ば。細い金縁メガネの奥から繰り出される視線は、オスカーの黒真珠とは違った意味で、直視困難なほどに強烈。170センチの痩身をこれまでもかとブランド武装する、スケート連盟の御大だ。

「通称」ってなんだよ、そう呼んでいるのはお前だけだろうが(笑)。ああもう、おもしろいなあ。

 この主人公の個性に拮抗できるキャラクターを生み出せるかどうかがシリーズの今後の鍵ではないかと思われる。この結末は次巻で新しい男性キャラがあらわれることへの伏線なのかな。