虹果て村の秘密 (ミステリーランド)

虹果て村の秘密 (ミステリーランド)

 読了。

 「かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド」第2回配本のなかの一冊。

 有栖川有栖によるロジック系本格ミステリの逸品である。島田荘司の「透明人間の納屋」もそうだったが、子ども向けだからということで手を抜いた部分はまったくない。

 犯人を追い詰める論理は(「孤島パズル」や「スイス時計の謎」ほどではないにしろ)精緻に組み上げられており、大人が読んでも充分に楽しめるエラリー・クイーン・タッチの推理小説だといえる。

 また推理作家をめざす主人公の造形は、どこかに少年の日の有栖川有栖自身の姿が投影されているようで微笑ましいし、結末の叙情性もいかにも有栖川らしい。

 たとえば綾辻行人法月綸太郎といった同世代の作家と比べて、このひとの作品はどこかセンチメンタルなものを感じさせる。

 そこが僕は好きだが、そう思わないひともいるだろう。それはしかたがないことだ。小説とは畢竟、その作家の個性そのものであり、完全に正しい人間がいないのと同様、完全に正しい作品もないのだから。

 しかし値段が高い。秀作ではあるが、これに2000円を払うのはちょっと……という気がする。それだけあれば「孤島パズル」と「双頭の悪魔」の文庫版をあわせて買えるわけだからね。

 まだ学生アリスシリーズを未読の方はまずそちらからどうぞ。