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 読了。

 久美沙織初の田園小説(?)。架空の田舎村(あの有名な上九一色村の隣りにある下九一色村という設定)の搾乳ヘルパーたちの事件らしい事件もない日常をほのぼのとえがいた連作短編集である。

 作品の傾向としては「ドラゴンファームはいつもにぎやか」(改題「竜飼いの紋章」)の系譜だろう。

 田舎暮らしや乳業関係の描写のリアルさはさすがに自身田舎暮らしが長い(らしい)久美沙織ならではのものかと思わせる。

 ただ詳しく調べるだけならほかの作家でもできるだろうが、なかなかこう真に迫った書き方をできるものでもない。狂牛病についての話は勉強になりました。

 特定の主人公を設定せず、いくつもの視点を絡め合わせながらひとつの物語を描き出していく手法も秀逸。

 ただ、その反面、設定においても物語においてもキャラクターにおいても強烈なインパクトに欠けるのが弱点といえば弱点といえる。

 一応、火事現場から死体が見つかる事件もあったりするのですが、本格ミステリを期待してはいけません。しかしまあとにかくよくできた小説なので、ほのぼのした小説を読みたい向きにはお奨めできる。