読了。

 田中芳樹の中断作品を新進作家の一条理希が受け継いで始めた作品だが、けっこうおもしろい。前巻から続けて読んでもたぶんそれほど違和感はないと思う。

 このシリーズ、前巻が出てから10年近く経っているので、とにかく続きを読めただけで感無量である。

 物語的にはあまり進んでいなくて、次巻へ向けての伏線と見られる展開がちらほらとある程度。これで次が10年後だったらさすがに怒るかも(笑)。ちっとも洒落になっていないなあ。

 ところで、田中芳樹の作品の主要人物は大きく考えてふた通りのタイプに分けられると思う。

 権力志向型と非権力志向型だ。権力志向型は強い野心と上昇志向の持ち主で、その野心にふさわしいだけの力量を持ち、しばしば膨大な血を流しながらも自分の夢を実現させていく。

 非権力志向型はそのような野心をまったく持たず、社会の傍流の立場で主流を批判的に見つづける。「三国志演義」の英雄タイプと「水滸伝」の好漢タイプの違い、といってもいいかもしれない。

 両者は本質的に異質な価値観の持ち主で、たとえ能力的には対等のものを持っていたとしても、まずその道が交わることはない。

 もっとも、運命(作者)の悪戯は、時に権力志向型の人間から権力を奪い、非権力志向型の人間にそれを投げ与えることもあるので油断ならないのもたしかである。

 「銀河英雄伝説」でいうならば、ラインハルト・フォン・ローエングラムは権力志向型でヤン・ウェンリーは非権力志向型にあたる。

 「マヴァール年代記」ならカルマーンやヴェンツェルは権力志向型でリドワーンは非権力志向である。そして本作でいえば、前巻の主人公グントラムが権力志向型で前々巻の主人公、白川周一郎は非権力志向型ということになるだろう。

 この違いはどちらが正しいというようなものではなくて、あくまで性格の差異にすぎないのだが、そういうことも考えながら読むとより一層おもしろく読めるというお話。