死霊狩り (Vol.1) (Beam comix)

死霊狩り (Vol.1) (Beam comix)

 かなりおもしろかった。やっぱり全盛期の平井和正は凄い。

 数千人の候補のほとんどを虐殺しつくす死亡率99パーセントの異常な訓練、その訓練を生き延びたわずか18名によって組織された最強の対ゾンビー部隊「死霊狩り(ゾンビー・ハンター)」の狂気の活躍を描く作品である。

 作画は韓国の漫画家梁慶一。全編セックス&バイオレンスに満ちていて、肌が震えるような怒りと憎しみが感じ取れる。

 僕が「マルドゥック・スクランブル」に感じた物足りなさの正体はこの「怒りと憎しみ」の不足かな。

 ちなみに韓国では日本にさほど劣らないほど漫画が盛んで、ここによると、

「「萌え」「攻×受」「〜にょ☆」「〜りゅん」「はにゃ〜ん(はぁと)」等は、ある程度日本語と親しくなるしかないオタク達には日本語そのままで通じます。勿論韓国語の発音に変えてですけど。(えみりゅん語とか。)」

 だ、そうである。読んでみたいなあ、韓国の漫画。

 ところで、ここからは余談だが、どういうわけかあんまり語られないことだけれど、田中芳樹の「創竜伝」というのは平井和正的な「正統派伝奇小説」のパロディとして読むべき作品であると思う。

 田中芳樹が伝奇小説に下した改革はいくつかあるんだけれど、たとえば、

1 セックス描写を排除したこと。
2 ヒーローを集団にしたこと。
3 「個」と「全体」の関係を逆転させたこと。

 などが代表的なものだろう。これはすべて実に革命的な決断なんだけれど、わかってもらえるだろうか。

 つまり平井和正的伝奇小説は「個」と「全体」の対峙の構図のなかで、全体から排斥され孤独な戦いを続けるしかないヒーローを描くものだった。

 しかし、「創竜伝」のなかではヒーローはあっさり集団に勝ってしまう。弱点もないし、孤独感も感じない。ほとんど無敵である。

 これは単体として見れば作品の欠陥とも見えかねないが、パロディとして見れば実に独創的な仕事なのである。

 その証拠に、「ファウスト」で笠井潔が言っていたように90年代の伝奇小説衰退後に残った伝奇小説家は菊地秀行夢枕獏田中芳樹だけである。

 ひとと同じことをやっている奴は生き残れないってこと。