- 作者: 西尾維新,竹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/07/05
- メディア: 新書
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読了。
非常におもしろかった。
あいかわらず本格ミステリとしてのトリックは実にどうということもない一発ネタなんだけれど、物語としては実に正当にして正常なつくり。いたってまっとうなドラマツルギーで、しかもよくできている。
この戯言遣いシリーズを、乙一の「GOTH」などと並べて、恐るべき子供たち(アンファン・テリブル)による人間性が「壊れている」人物を描く新世代の物語と見る向きは非常に多いわけだけれど、この作品を読めばそれが間違いであることがはっきりわかる。
本人がそう思っているかどうかはともかく、主人公のいーちゃんはいたって人間的である。ただ、悲しいから涙を流すとか、いとしいから抱きしめるとかいう風に感情がパターン化されていないだけだ。
人間はしばしば「こうあらねばならない」という様式に無意識に支配されて行動する。家族の葬式だから泣かなければならないとかね。
そういった行動は純粋とはいえない。悲しいから、笑う。いとしいから、殺す。そんな一見矛盾した行動こそ人間性の高貴なる複雑性の証であり、純粋な感情といえるのではないか。
様式化された感情こそが人間性だと信じているひともいるし、そういうひとはこのシリーズを非難するんだけどね。