七王国の玉座〈1〉―氷と炎の歌〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

七王国の玉座〈1〉―氷と炎の歌〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

 ジョン、なのだ。

 ジョンなのである。

 なにがって、主人公のひとりの名前が。

 地底の都ドルーヒム・ヴァナーシュタに住まう闇の公子アズュラーンだの、〈光の帝国〉メルニボネの皇子エルリックだのに比べるとあきらかに手抜きの名前である。

 これだからアメリカ人は困る。おまけに同名の人物が何人も出てきて混乱する。この巻だけでロバートとブランドンが何人出てきたことか。

 しかしこれは傑作。惚れ惚れするほど傑作。物語の格調の高さとスケールの壮大さという点でダン・シモンズの「ハイペリオン」に優に匹敵するというとんでもない作品である。

 作品のスケールとは、畢竟、時間的空間的広がりだけでなく、細部をどこまで書き込むかによって決定する。

 その点、この小説は文句のつけようがない。設定レベルでは独創的な部分は何もないのだが、ファンタジーの神は細部に宿る。描写力でいえばたぶんここ100年間で世界中で書かれたファンタジーで数本の指に入る出来。