六の宮の姫君 (創元推理文庫)

六の宮の姫君 (創元推理文庫)

 読了。

 戦前の文学界を代表するふたりの天才・芥川竜之介と菊地寛、その友情と対決を描くシリーズ第4弾。あいかわらずおもしろい。

 もともといわゆる本格ミステリの常識からはかなり逸脱したシリーズではあるが、それにしてもこれはとびきりの異色作というべきだろう。

 いわば文学評論をそのまま1冊の小説に仕立て上げてしまった作品なのだ。

 主人公の「私」は、芥川の短編「六の宮の姫君」を探っていくうちに、菊池寛というもうひとりの天才と向き合うことになる。

 戦前の文壇を代表する大御所でありながら、大衆小説にこだわった菊池と、ただひたすらにおのれの道を往こうとしながら、しかしまわりの意見を気にせずにはいられない芥川、

 異質であるからこそ惹かれあったふたりの生涯が、この本を読むうちにありありと目に浮かぶ仕掛けとなっている。

 この本を読み終わったなら芥川や菊地の小説を読みたくなることは請け合いである。

 「文藝春秋」を創設し、芥川賞および直木賞を生み出したのが「真珠夫人」の菊地寛だったなんて知らなかったよ。

 いやまあ知らないのは僕が非常識だからなんだろうけれど、勉強にもなるし、勉強のきっかけにもなる1冊であった。

 「私」は典型的な活字中毒の文藝マニアなので、おもしろい本をおもしろそうに語るのがうまいのである。

 しかしまあ、実際、異様にレベルの高いシリーズだと思う。我孫子武丸が「北村薫本格ミステリマニアだが、小説がうますぎるので新本格派には入れられなかった」という意味のことを書いているのだが、その意味がよくわかった。

 うますぎます、北村さん。これでこのシリーズは一応既刊をすべて読み終えたので、「早く続きを!」と待ち望むことになりそうだ。

 残る未読の北村薫は「スキップ」「リセット」「ターン」の「「時と人」3部作」と、異色作とされる「盤上の敵」、そして短編集「水に眠る」、本格ミステリ・マスターズの「街の灯」の6冊。

 はやく読もうっと。